「エンジンの揺れ止めのゴムを換えなきゃ。」
ミニに乗っている方であれば、聞いた事がある人も多いのでは?
ステディロッドというのは、エンジンの揺れ止めの棒の事で、
そのステディロッドにゴムのブッシュが付いています。
まずは、実物を見てみましょう。

薄くピンク色が付いている部分がステディロッドです。



では、何故ステディロッドが必要か考えてみましょう。
エンジンが揺れるので、揺れを抑える為に付いている訳ですが、
ミニのエンジンが何故揺れるのかを説明したいと思います。
下の図をご覧下さい。



上の図は、ミニのエンジンを左側(ラジエターがある側)から見たものです。
エンジンは、ほぼ中心の部分で、クランクが回転しています。
クランクとは、ピストンの上下運動を回転運動に変換する為のもの。
クランクはとても重い部品で、青い矢印の方向へ回転しているのです。
アクセルを踏み込み、エンジンの回転が上がるというのは、このクランクの回転が上がるという事。
青い矢印の方向へ回る速度が上がっていくと、エンジン本体は反動で赤い矢印の方向へ動きます。
回転が上がれば上がる程、反動も大きくなるのです。
つまり、アクセルを踏んでいくと、エンジンは前に傾こうとする動きをします。
逆に、アクセルを踏んで加速していた状態からアクセルを離すと、クランクの回転は青い矢印の
方向のままですが、減速する為に力は逆にかかります。
するとエンジン本体にかかっていた反動も赤い矢印と反対方向、後ろ側へかかる事になるのです。
つまり、走っている時は、常に前後方向へエンジンは動こうとしているのです。
また、エンジンの固定位置にも問題があります。
クランクの下、ピンクの丸の部分でエンジンを固定しているのですが、固定位置が下の方にある為、
上側の動きを抑える事が出来ません。
そこで、上側の動きを抑える為にステディロッドが必要なのです。


ステディロッドは、ロッド本体は鉄で出来ています。
しかし、鉄のままガッチリとエンジンを固定してしまうと力の逃げ場が無くなってしまいます。
そこで、ロッドの取り付け部にゴムブッシュを入れて力を逃がしているのです。
下の写真は、ロッド本体と取り付け部のブッシュの写真です。



この力を逃がす為のブッシュですが、材質はゴム。
つまり、時間が経つと劣化してきます。
エンジンを押さえる力で潰れたり、エンジンの熱で硬くなって割れたり。
下にダメになったブッシュの写真を載せておきます。



ブッシュがダメになると、取り付け部に隙間が出来てしまいます。
その隙間がある事で、エンジンの揺れを抑えきれず、エンジンが揺れてしまいます。
では、エンジンが揺れるとどの様な問題が起こるか考えてみましょう。
エンジンからは、排気のパイプが出ており、その先はマフラーへと繋がっています。
簡単な図で見てみましょう。



ちょっと線が歪んでいますが、ミニを横から見た図だと思ってください。
灰色の部分がエンジン、青い部分がマフラーです。
マフラーは、オレンジ色の部分でエンジンやボディに固定されています。
エンジンが前後に揺れるという事は、当然マフラーも一緒に動く事となります。
エンジンを揺らしたままでいると、マフラーの取り付け部が破損したり、
最悪の場合は、マフラー本体が折れてしまったりします。
さらに悪い事がもう一つ。
ステディロッドの取り付け部が破損する場合もあるのです。
その取り付け部の簡単な図を下に。



上の図は、ステディロッドの取り付けを横から見たものです。
青い部分がステディロッドで、左の丸い部分がエンジンに、
右側の四角い部分(上から見ると丸です)がボディ側に固定になります。
ボディ側は、図の赤い部分がブラケットになっていて、上側の赤い部分は、
ブレーキやクラッチのマスターシリンダーのブラケットです。
下側の赤い部分は、L字のブラケットがボディに溶接されています。
揺れている状態ですと、取り付けボルトの穴が広がってしまったり、
上の図の点線の部分から折れてしまったりするのです。
ここが折れると、回りの補器類を外して溶接となりますので、
修理に金額もかかってしまいます。
折れたままですと、エンジンがグラグラ揺れているのですが、
そのまま乗ってしまっている方もいますね。
実際に折れた写真を紹介します。



上の写真の赤丸の中、矢印がある部分が破損して隙間が出来ています。
いくらブッシュが新しくても、元が動いてしまっては仕方ありません。
ここまで破損すると、エンジンはグラグラの状態です。
では、どうやってブッシュが傷んでいるかを見極めるのか?
答えは簡単です。
エンジンを掴んで、揺すってあげればイイのです。
簡単なチェックの仕方を「初心者のページ」の「ミニの短所」で紹介していますので、
参考に見てみて下さい。
エンジンを揺する方法の他にも、走っていて3速でアクセルを踏んだり離したりしても
確認が取れます。
アクセルを踏み込んでパッと離した時に、前の方から<ゴン>と重い物が当たる様な
音がしたら要注意。
つまり、エンジンの揺れが押さえきれずに動いてしまっているので音が出るのです。
簡単に確認出来る事ですから、日頃からチェックしましょう。


ブッシュの寿命は、乗り方にもよりますが、早い人では2ヶ月くらい、
慣れてきた人で半年から1年で痛んできます。
クラッチの繋ぎ方が荒い人や、アクセルのON−OFFが激しい人は痛みが早いですね。
オートマ車の場合でも半年から1年で痛んできます。
ブッシュが傷んできて良い事は何一つありません。
早めのチェックで、他を壊す前に交換しましょう。

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