チューニング・カーに乗るお客様が山へ走りに行き、その帰りの出来事。 コンビニに寄り買い物を済ませエンジンを掛けようとした時、キーを捻るがスターターが回らない。 「バッテリー上がりか?」という感じですが、押しがけしようにもギアを入れた状態だとロックしてしまい動かない。 これは一大事という事でキャリアカーで引き上げとなりました。 それでは、一体何が起こっていたのか?紹介したいと思います。

まず、一番気になっていたのは、ギアを入れると車を動かせないという事。 4速に入れ、車を押しますがウンともスンとも動かない。 クラッチを切れば動くのですが、繋ぐともうダメ。 どうにも動きません。 スターターモーターを外し、クラッチハウジングの中をのぞいて見ると、鉄粉がかなり出ている。 ドコかが噛んでいて動かないようです。 クラッチハウジングをバラし、中を確認してみるしかありません。 さぁ、ドコが悪い?



クラッチハウジングをバラし、原因が判明しました。 原因は下の写真の部品。 さて、ドコが悪かったか解りますか?
 
 
上の写真は、フライホイール。 ウルトラ・ライト(軽量)フライホイールです。 写真で見る限り、特に異常は無さそうに見えますが・・・。



下の写真をご覧下さい。 フライホイールを横から見た写真ですが、赤矢印の部分に隙間が出来てしまっています。 つまり、ギアの部分が写真だと下方向にズレてしまっているのです。
 



では、何故、ギアの部分がズレてしまったのでしょう。 フライホイールの裏側を見てみると、その答えがありました。 ウルトラ・ライトのフライホイールの場合、上側の写真ように3箇所で溶接され固定されています。 赤矢印の3箇所がそうです。 ここの1箇所が下側の写真のように赤丸の中で剥がれてしまったのです。
 



結果、ギアがズレてしまい、それがクラッチハウジングのケースに当たりロックしていたのでした。 下の写真を見ると、ギアが削れているのが解ると思います。 また、溶接が剥がれる原因となったのは、旧型スターター・モーターにもありそうです。 旧型は青い矢印の方向からスターター・モーターのギアが出てくるのですが、その時の負荷がかかってしまいます。 レーシング・スターターや新型のスターター・モーターは反対側からギアが出てくるので負荷がかからないのです。 フライホイールの溶接箇所を増やすなり、対策をしておいた方がよさそうです。
 



何にせよ、フライホイールだけで済んだのはラッキーでした。 ギアがずれ、フライホイールがクランクをかじってしまったら・・、ブロック側に傷を付けていたら・・と考えると、本当にラッキー。 細心の注意を図って組んだチューニング・パーツでも、こういう事があるという事件でした。