ギリギリでした

わたし津久井は、10月に行われているヒストリック・オートモービル・フェスティバルにMK−Iで参加予定でいました。 イベントの一つの催しである「サイドウェイ・トロフィ」というレースに参戦する為なのですが、そのレース直前に起こった出来事を紹介したいと思います。 

レースを3週間後に控えた日のこと。 いつも通りMK−Iで出勤している途中の出来事です。 パーシャル(一定の位置でアクセルを踏まず戻さず)の状態で走っているときに、一瞬ミスファイヤのような感じで息継ぎをするような感じがありました。 「おや?」と思ったのですが、すぐ復旧してしまい、その後は何ともない感じで走っている。 ちょっと様子を見つつ走っていたのですが、症状もでず後でチェックすれば大丈夫だと思っていました。 しかし、15分ほど走っていると、今度はパーシャル状態でパンッ、パンッとアフターファイヤーが出るようになってきました。 「あれ?」と思っているうちに、どんどん症状が酷くなり、そのままガス欠のような感じでエンジンストール。 直後はエンジンがかからず、しばらく経ってからスターターを回すと何事もなかったかの用にエンジンがかかる。 しかし、少し走った所でまたバックファイヤー、そしてエンスト。 「これはイカン」と言うことで、急遽キャリカーにて車を移動、原因究明に乗り出します。 さあ、レースまで3週間、どのような原因が隠れているのか? レースには間に合うのか? ドキドキしながらの調査です。


「ヘッドガスケットでも抜けたか?」と、まずは圧縮を測ってみる。 1275Sのスタンダードでの状態での圧縮は9.75:1。(COOPER’S’コーナー参照)) 実際に計測してみると10.3くらい出ています。 4気筒ともほぼ同等の数値。 カーボンの付着等あるのでしょうか、少し高い値が出ています。 ん〜、そうするとなんだろう? とりあえず、点火系パーツをチェックしてみます。


実は、点火系がちょっと怪しいとも睨んでいました。 と、いうのも、津久井号はもともとフルトラKITが組んであり、ポイントレスになっていたのですが、フルトラのセンサー部がバラけてエンジン不調となり2ヶ月ほど前にポイントに戻していたのです。 「もしからしたら、その部分では?」という期待もありました。 ここで何かあっても嫌なので、点火系パーツは新品に総交換。 再度、点火時期も調整しなおし、アイドリング、空吹かしでは非常に安定しています。 そしてテスト走行。 ・・・ダメでした。 しばらくは順調に走っていたのですが、やはりパーシャル状態の時に以前よりはいいですがアフターファイヤーがでる。 加速時や減速時は良いのですが、パーシャルの時だけたまに出るという感じ。 さあ、困った。


で、こうなりました。 ヘッドガスケットの交換もしていませんでしたし、レース中に何かあるのも嫌なので、ヘッドは剥がして確認する事としたのです。 写真はヘッドを剥がした状態のシリンダーです。


完全なガスケット抜けはありませんでした。 しかし、2番と3番の間は少し抜けかかっている感じはありました。 どちらにしろ、開けて正解でしたね。 ただ、これといった決め手がありません。 う〜ん。 とりあえずシリンダー内部の確認出来る部分の状態は良く、それには少し安心。 


ついでにシリンダー内径も計測。 スタンダードな1275ccでした。


折角外したのですから、ヘッドのチェックも行っておきます。 津久井号のヘッドはクーパーSヘッドをベースに加工しているチューニングヘッドが載っています。 各部のチェックをしていきましょう。


面研、ビッグバルブ、ポート研磨等行われています。 一通りチェックし問題が無かった為に一安心。 さあ、組み付けです。


さて、折角バラしましたからガスケットはメタルガスケットに変更。 それとシリンダーのスタットボルトは錆びも出ていましたのでARP製強化スタットに変更しました。 ヘッドを組み付け、キャブの取り付け等行い、いざエンジン始動。 ・・・ところが、アフターファイヤーが前にも増して酷くなってきました。 今ではアイドリングもままならない状態に・・・。 症状から見ても点火系が絡んでいるのは間違いなさそうなのですが・・。 さて?


プラグやプラグコード、イグニッションコイルは最初に交換して確認済み。 点火系で残るはディストリビューター本体のみ。 クーパーSには23Dというタイプのディストリビューターが付いています。 長年使っているパーツですし、シャフトにも少しガタがありますので、換えるのには惜しくはないコンディション。 そこでサーキット走行やレース等のことなども考えアルドン製レーシングディストリビューターに変更する事にしました。


交換を終え、エンジン始動。 なかなか快調な音を立ててSユニットが始動しました。 点火時期を調整、さあ走行テストです。 まずは低回転。 アクセルの付きも良くスムーズに回っていきます。 そこから踏み込んで加速。 音も回りもスムーズ。 しばらくパーシャル状態で走ってみますが問題なし。 やはりディストリビューターに問題があったようです。 後は、走りながら様子を見つつ調整していきましょう。


こちらが実際に外したディストリビューターの中身です。 ポイント等は交換しているので新しい物が付いています。 中心のシャフト、ここが回転をして点火の振り分けを行うのですが、シャフトにガタが大きかったりするとタイミングのブレや、ポイントの開き加減に影響が出たりしてエンジン不調になりますね。 今回、シャフトはそれほど大きなガタはありませんでした。 では、何が原因だったかというと、元々ディストリビューターには回転数の上下に応じて点火時期を早めたり遅くしたりという機構があります。 高年式のミニや、クーパーS以外のミニでは、エンジンの空気を吸い込む負圧を利用するものと、重りで遠心力を利用するものと2タイプが付いています。 クーパーSには負圧を利用する機構はなく、遠心力だけになっているのですが、どうらやその機構が上手く働かないようです。 その為、動いたまま引っかかってしまったり、動かなかったりしてたみたいですね。 解ってしまえば単純な事ですが、以外と盲点なポイントでもあります。


その後、順調に慣らし&調整を終え、無事にサイドウェイ・トロフィにも参戦してきました。 ギリギリの出来事でしたので、少し焦りましたが、ほんとレース直前やレース中でなくて良かったです。 レース後の今も快調に走っていますよ。

今回の例は、走行不能な状態にまでなってしまったので、対処をしなければならないという状態でしたが、実際に走行できている車輌でも不具合を抱えている場合もあります。 「アクセルを踏んで、いま一つ本調子じゃないんだよね」と言っていた車輌もディストリビューター本体のシャフトのガタが原因であったり、やはりパーシャルで踏んでいて息継ぎをしたり、ストールといった症状が出ている車輌もあります。 ローターやポイント等の中身は定期的に交換していても、ディストリビューター本体を交換している車輌は少ないでしょう。 今回は40年以上経っているオールド・ミニの話しでしたが、高年式のミニでも10年を超えている車輌が多くなってきています。 もし、似たような症状が出ている方、また不安に思われる方、ぜひ一度ディストリビューター本体を点検してみては? ディストリビューターがシッカリすると、吹け上がりも違いますよ!