最終モデル、ツインインジェクター車の事です。
Oさんは、新車で買われ、走行約30000km。
これから本調子だという時に事件は起きました。
暫く前から、エンジンをかけると金属音が・・・。
とりあえず音だけ我慢すれば走れていたので、そのまま乗っていたそうです。
しかし、金属音がすると言う事は、どこかに問題があるはず。
この時点で点検していれば事件は起きませんでした。
ある日の事、くるまを走らせていると音も大きくなり、ついにエンジンルームから白煙が!
ボンネットを開けてみると、冷却水は空、
発電機とウォーターポンプを回しているベルトがずれて、外れている。
そのまま走行不能となり、牽引で運ばれてきました。
まずは、ベルトが外れた原因を調べることに。
下の写真をご覧下さい。


このボルトが何のボルトか解りますか?
エンジンの重要な部分に付いているボルトです。
簡単な図を書いて見ました。


エンジンは、中心部でクランクシャフト(上図、青い部分)という物が回転しています。
このクランクにピストン(上図、オレンジの部分)がつながっており、
爆発の力を回転力に変換しているのです。
そしてクランクの回転をプーリー(上図、緑の部分)で取り出し、ベルトが駆動される事により、
発電したり、冷却水を循環させたりしています。
このボルト(上図、ピンクの部分)はそのプーリーをクランクに固定する為のもの。
下の写真の赤い矢印の所に付いているものです。


赤い矢印の先にプーリーがあります。
この中心にクランクが入っていて、先ほどのボルトが矢印側から入ります。
今回の問題はここにありました。
ボルトが外れ、横に転がっていたのです。
ボルトの写真を見て頂くと解りますが、ボルトの頭の部分で鉄板が曲げられています。
これはボルトが緩まないように頭を押さえているものです。
それがあったにもかかわらず、ボルトは脱落してしまったのです。
早速プーリーも外してみると・・・。


プーリーを外した写真です。
飛び出しているシャフトがクランクシャフト。
これでは解りづらいので、アップにしたのが下の写真です。


矢印の先がクランクシャフト。
ちょうど矢印の先端部分、ここに大問題が発生したのです。
ここは半円状に切り欠きがあり、上の写真の右上、丸の中の部品が入る様になっています。
この部品が突起となり、プーリーが固定されるのですが、写真で解りますか?
点線で書いた部分、ここがポッキリと折れてしまっています。
結果、この部品が外れ、クランク側の切り欠きも削れてしまっているのです。
ここが外れてしまうとプーリーは固定されなくなるので、回転しなくなってしまう。
つまりベルトも回らずに、発電されない。
そして冷却水も循環しないのでオーバーヒート、冷却水が噴出す事となったのです。
プーリー側も見てみましょう。


上の写真は外したプーリーですが、赤矢印の部分に先ほどの破損した部品が入る形となります。
最終的に空回りしていたので、プーリーの内側もガタガタに削れてしまいました。
もちろん、再使用は不可能に。
ボルトが外れた事、そして異常があったにもかかわらず乗ってしまった事で
ここまで故障がひどくなってしまったのです。

今回の故障は、通常緩んではいけないボルトが外れた事から始まりました。
もちろん緩み防止がついていますので、普通では考えられない故障です。
よほど新車の組み付けが甘かったのでは?と考えられます。
クランクは再使用不可となってしまいました。
クランク交換となると、エンジンを降ろし、分解する事になります。
その模様は、仕事中コーナーで紹介していきたいと思います。
いつもと違う音がする、匂いがするといった場合には、必ず原因があります。
「そのまま走れるから。」と放っておかず、点検する事をお勧めします。
今回も緩んだだけであれば、ここまでひどくはならなかったでしょうから。