先日の事です。
Iさんから電話があり、「水が減って水温が上がる。」との事。
Iさんは、取り引き上の付き合いがある方なのですが、
ミニは1度も乗ってきた事がありませんでした。
取り合えず水を足してもらい、車を預かることに。
近くの方なのですが、店まで乗ってきた時点で
0.5リッターくらい冷却水が減っています。
今まで点検整備等はした事がなく、車検だけ継続していたようです。
実際に調べてみるとラジエターのキャップの辺りから水が漏っていました。
キャップかと思い、キャップを外してエンジンをかけてみると、
ボコボコとエアが出てきます。
どうやらオーバーヒートでガスケットが抜けているようです。
さて、何でオーバーヒートしたのか原因を調べていきました。
そして、その原因が下の写真。


これが何か解りますか?
サーモスタットという名前を耳にした事があると思います。
それが上の写真の物体です。
では、ドコにあるかと言うと、下の写真の赤丸で囲んだ部分。
この中に入っているのです。


では、サーモスタットは何の役をしているのか考えてみましょう。
エンジンの中には水が回っています。
その水でエンジンを冷やしているのです。
ところが、最初から水をグルグル回してしまうと、エンジンが冷えすぎてしまいます。
そこで、水が一定の温度になるまで、弁を閉じて
水がラジエターまで回らない様にしているのです。
その弁がサーモスタット。
設定された温度になると弁が開き、ラジエターに水が回ります。
逆に弁が開かないと、ラジエターに水が回らないのです。
下の図を見て下さい。


エンジンを正面から見た図を簡単に書いてみました。
赤い四角がサーモスタットです。
弁が閉じている場合はエンジン内部でだけ水が回っています。
今回の原因はここにありました。
サーモスタットは水の通路の弁ですから、当然、冷却水の中に浸かっています。
今まで一度も外していなかった為に、錆びで動かなくなってしまったのです。
弁が開かなければ、エンジンの内部で水温がドンドン上がり、
結果としてオーバーヒートしてしまうのです。
それと、サーモスタットには設定温度があります。
ミニで使われるのは、74度、82度、88度の3種類。
夏前には早く開く74度を入れて、冬前に88度を入れる。
入れ替えによって点検も出来る訳です。

また、ウォータージャケットの中も、
長年のゴミが溜まり通路が詰まってしまったりもします。
通路が詰まれば水は回りません。
それによって水温が上がってしまう事もあるのです。


Iさんの場合は、サーモスタットが完全に錆びついていました。
まったく開かない状態になっていたのです。
結果として水が回らずオーバーヒート。
オーバーヒートによってヘッドガスケットも抜けてしまったのです。
また激しくヒートしてしまうとヘッドが歪んでしまったりもします。
今回は大丈夫でしたが・・。


ミニは決してオーバーヒートしやすい車ではありません。
良く「オーバーヒートする。」とか、
「ラジエターを大きい物にしないと。」とか聞きますが、
水がしっかり回ればそんな事はないのです。
オーバーヒートしやすいのではなく、オーバーヒートさせてしまっているのです。

Iさんの場合も、定期的に点検をしていれば大丈夫な事でした。
たかが1000円ちょっと部品で済んだ事が、
結果として大変な事になってしまいました。

水廻りについては、最低でも2年ごとにクーラント及び
サーモスタットの交換をお奨めします。
クーラントもただ入れ替えるのではなく、
スチームでウォータージャケット内を清掃した方が良いでしょう。
クーラー付きのミニの場合は、エンジンに対する負荷も大きい為、
余計に気を使ってあげた方が良いですね。

あなたのサーモスタットは錆びていませんか?