毎回ツーリングや、サーキット走行会にも参加してくださるKさん。 昨年の走行会でもイブシ銀の走りを披露してくれました。 1000ccノーマルですが、完全に使いこなしているという感じです。 しかし、昨日エンジン不調となり入院となってしまいました。 その時の模様を紹介したいと思います。

症状としては、アイドル不調、そして吹かし込むとバタバタとなってしまう。 「ガスケットが抜けたかな?」と思い、圧縮を測ってみた所、案の定3番シリンダーと4番シリンダーが圧縮が出ません。 ほぼ間違いなくガスケット抜けでしょう。 ヘッドを剥がしガスケット交換、そしてヘッドを剥がすついでにヘッドはオーバーホールする事となりました。

ロッカーカバーを外した図。 これからヘッドを剥がしていきます。



ヘッドを剥がしてみると、やはり3番と4番の間が吹き抜けています。 サーキットも走っているし、寿命でもあったのでしょう。 右下の写真、赤丸の中が見事に吹き抜けています。

ヘッドを剥がした状態のエンジンルーム。 赤丸の中が完全に吹き抜け、3番シリンダーと4番シリンダーは、お友達となっています。



ヘッドも燃焼室を見ると、かなりカーボンが溜まっています。 これでは100パーセントの性能を発揮出来ていないですね。

黒く見えるのはカーボン。 バルブにもビッチリと付着しています。



ヘッドからバルブ、バルブスプリング等を外しバラしていきます。 この後、燃焼室、バルブ等のカーボンを落とします。

バルブ等、パーツが外されたヘッド。 こちらは外したバルブやバルブスプリング。



各パーツを磨きこんだ後、組み付けを行っていくのですが、バルブガイドは磨耗してガタが出ており交換となりました。 また、バルブを組み付ける時は丁寧に摺り合わせを行い、しっかりと密着するようにします。

各パーツの組み付けが完了。 燃焼室、バルブがキレイになっているのが解るでしょうか?



ヘッドはオーバーホールと同時に、タイトルにあったようにちょっとだけチューニングを行いました。 吸気側のポートを少し削り拡大、排気側もポートを整えました。 ポートを広げたといってもそれほど拡大はしておらず、チューニングレベルでいうとステージ0.2くらいでしょうか。(チューニング度合いのよってステージ1→ステージ2と上がっていく)

赤矢印の先が吸気側のポート。 削った後が解りますか?



折角ヘッドを降ろしたのですから、色も塗り直します。 ノーマルにこだわるKさんの希望で、1000のオリジナルのイエルーで塗装します。

再塗装されたヘッド。 この角度からもポートの削られた様子が解る。



さて、ヘッド本体のオーバーホールは終わったのですが、他にもちょっと不具合が。 バルブを駆動する為のロッカーアーム(左下の写真)がかなり磨耗しています。 特にバルブガイドが減って、バルブが遊んでいた箇所はかなり削れていました。 そこで、ロッカーアームも交換です。 それともう一つ、カムシャフトからの動きを伝えるリフター(右下の写真)にも虫食いが出ているので、リフターも交換です。

写真の上側の方で、銀色に見える部分が削れています。 その部分が、バルブを押し下げる所です。 リフターの表面にポツポツと見えるのは磨耗している部分。 虫が食べたように見えるので虫食いと言います。



ヘッド側の作業は終わり、シリンダー側のガスケットが付く面をキレイに整えます。 後はヘッドを載せるだけです。 この時、ヘッドを止めるスタットボルトにも劣化が見られた為、スタットボルトも交換となりました。

シリンダーの上面はキレイに磨きこまれています。



さぁ、いよいよヘッドを組みつけていきます。 タペット調整を行い、後はロッカーカバーを取り付けるだけです。

タペット調整とは、ロッカーアームとバルブのクリアランスを調整する事です。



外したついでに、キャブレターも分解・清掃しておきます。 茶色く見えるのが汚れが付着している部分です。

キャブレター本体。 ピストン、ポット等。



さぁ、いよいよ組みあがりました。 まだ慣らし運転の段階ですが、乗った感じはとてもスムーズ。 エンジン音もとても滑らかです。 ステージ0.2の効果は全開走行が出来るようになるまでのお楽しみという感じでしょうか。 とても良いバランスに仕上がったと思います。
慣らしが終わるのが楽しみです。



ヘッドガスケット抜けは珍しいトラブルではありません。 年式が古く、ある程度の走行距離を走っている車輌では、完全に抜けていなくても、少しずつ圧縮が抜けている場合も多いです。 一度、ヘッド周りのオーバーホールを行ってみませんか?