以前、「マーコス修復記」として登場したマーコスMK−IV。 2004年6月に行われた「サーキット走行会」でも順調な走りを見せてくれました。 無事、走行会も終了し、その後も良い調子を維持していたのですが、来る10月21日の走行会に向け点検を行う事となりました。 その点検で何が見つかったのか? それでは、詳細を紹介します。

今回は、走行前に12ヶ月点検を行う事になりました。 ザッっと見て足回りのブッシュ類やステディブッシュ、ハブのカラー等が交換時期に来ています。 この辺りは、通常の消耗品であり、マーコスだから・・という箇所ではありません。 消耗品の寿命が来た状態ですね。


上の項目は、特別なものではなかったのですが、他に珍しい症状が隠されていました。 移動&確認で車輌に乗ると、ブレーキペダルを踏み込んだ時に、クラッチペダルも奥へ動いてしまいます。 「これは何かあるぞ」という事でペダルBOXのチェック。 そこで見たものは下の写真の通りです。
取り外したペダルBOXの写真ですが、右の写真で見ると良く解るように、BOXの取り付け部が割れて開いてしまっています。 これではペダルを踏んだ時にBOXごと動いてしまい、最悪は外れてしまうところでした。


ペダルBOXには、もう一つの不具合がありました。 それは、クラッチペダル&ブレーキペダルが通っているシャフトです。 通常、このシャフトはペダルBOXに固定されており、ペダルが動いてもシャフトは回らない仕組みになっています。 ところが、クラッチペダルとシャフトが固着してしまい、ペダルが動かなくなってしまったのでしょう。 普通は、固着を剥がすなり、部品交換を行うのですが、以前にこの部分の修理を行った際、キチンとした修理を行うのではなく、シャフト自体が回るように細工をしてあったのです。 シャフトのロック部(左の写真の青矢印の部分が、赤矢印の穴に入り固定される)をワザと外し、シャフトごとペダルが動くようになっていました。 これでは、修理とは言えない状況です。 また、ペダルBOXを固定しているボルトもご覧のように錆びだらけで、BOXを取り外すのも一苦労でした。


ペダルBOXはそっくり交換する事にしたのですが、ここで幾つかの問題が。 まず、ペダルBOXを固定する為のボルトが通常の長さでは届かない。 下写真の左上のようにマーコスのバルクヘッドはファイバー製で、強度を持たせる為に厚みがあるのが原因。 その厚みに対応する為に長いボルトが使用されていました。 丁度良い長さのボルトを探し、新しく打ち変えです。 また、直接ペダルBOXに関することではないのですが、ステディロッドえお固定する為のブラケットも、ファイバー製のバルクヘッドにボルト&ナットで固定されていました。(写真 左下) これでは強度が足らずにエンジンが揺れてしまいます。 そこでペダルBOXに加工し、ブラケットがペダルBOXへ固定出来るようにしました。 右下の写真にある赤線で囲まれている部分が今回追加した箇所です。 これでかなりシッカリとステディロッドが固定できる事でしょう。


ペダルBOXに合わせ、ペダルも交換します。 何故、ペダルを交換するか?というと、下左の写真のようにマスターシリンダーと連結される部分が変形してしまい、ガタが出てしまうからです。 しかし、マーコスにはオールドタイプの小さなペダルが付いており、この部分だけを切断し、交換するペダルへ溶接しなおします。 細かい部分で手間もかかるのですが、こだわりたい箇所ですね。


交換するペダルBOXの錆びを落とし、キレイに塗装しなおします。 下の写真は完成品。 後は取り付けるだけとなりました。 ペダルBOXを交換するに当たり、ブレーキSWもNEWタイプに変更します。 マーコスは油圧式の旧タイプが付いているのですが、圧がかからないとブレーキランプが点灯しないのと、「ブレーキSWの反応を早くしたい」という要望があった為、NEWタイプで行く事となりました。 白いSWがブレーキSWです。


さて、ペダルBOXの加工が済んだので、足回りの方も見てみましょう。 各ブッシュ類、ハブのカラーが傷んでいたのは始めに紹介しました。 ハブはベアリング等に異常は無い為、カラーを新品に交換。 ブッシュ類は交換時に足回りをバラしますので、「折角バラすなら・・」という事で兼ねてから計画のあったネガキャンを組む事となりました。 ロアアームは2度の固定式を選択(強度、バランスから)し、アジャスタブルの強化テンションロッドと組み合わせます。 ブッシュ類は、ネガキャンを入れる事で負担が増える為、エーボンバーの強化ブッシュを使用します。


足回りの作業も終了し、残すは追加の作業分となりました。 実は、前々から予定していたのですが、ブレーキマスターをKADに変更します。 マーコスはシングルタイプのマスターシリンダーが使用されており、サーキット走行等のスポーツ走行を考えると、シングルでは突出量が少なく一度でガツンとブレーキがかかりません。 そこでKAD製のマスターシリンダーに変更する事により、ピストン径が大きくなり同じようにペダルを踏んでも高い圧力を作る事が可能となります。 下の写真の中央にあるシルバーに輝くのがKAD製マスターシリンダーです。 サーキット走行にてコンマ1秒を争うには強い武器が装着されました。


そして、もう一つ追加で行ったのが、ロアステディロッドの増設。 ペダルBOX及びステディロッドの取り付けブラケットを加工し強度を持たせたのですが、更なる剛性UPを狙い、ロアステディを追加しています。 片側1本の追加ですが、これだけでも剛性感はかなり変りますね。 スポーツ走行をメインに考えるなら、是非取り付けたいパーツでもあります。 これにて作業終了。 サーキットでもタイムアップしてくれる事でしょう。

今回、サーキット走行前に点検を行う事により、かなり重要なトラブルを発見する事が出来ました。 これは、サーキット走行だけではなく、一般道を走る上でも危険な事に変りはありません。 直接、事故に繋がってしまうトラブルがある場合もあります。 やはり点検は重要です。 「サーキットなんて走らないから」と言う事ではなく、点検は行ってください。 車は走る凶器だと言う事を認識し、楽しいミニ・ライフを送りましょう。