ミニをベースにしたキットカーの1つであるマーコス。 ツーリングでは何回か写真に登場している車です。 今回、「サーキット走行をする前に・・・」という事で、点検に預かったのですが、そこで事件?発生です。 それでは、事件発生から完了に至まで簡単に紹介したいと思います。

事件の始めは、点検に預かった時の事でした。 「サーキットを走る前に、一通り点検しましょう。」という事になり、お客様から車を預かりました。 エンジン、足回り、ブレーキと、一通りチェックしていったのですが、足回りのチェックをしていた時の事です。 フロントのショックを取り付ける為のブラケットを止めるボルトが緩んでいる。 増し締めをしようとしたのですが、中で空回りしてしまい締まらない。 下は、ブラケットを外した状態の写真。



もともと、マーコスのボディはFRP(ガラス繊維を入れた強化プラスティックのようなもの)で出来ており、当然、ボルト留めしたりする箇所には鉄板が入っているはず。 もしかして、鉄板が・・・という事でFRPを剥がしてみると・・。
ブラケットの取り付け部分を剥がしてみてビックリ! ブラケットを固定する裏側の鉄板は、腐って形が無くなっています。 これでは、いくらボルトを締めようとしても締まらないはずです。



外したブラケットと、その裏側の鉄板。 ブラケットも見事に錆びていますが、鉄板に至っては原型を留めていません。 「あのままサーキットを走っていたら・・・」と考えると恐ろしくなります。 ほんと、走っている途中に取れなくて良かったです。



ここから、ブラケット取り付け部の再生に入ります。 まず、錆びて腐っている部分を取り除き、新たに作成した鉄板をあてがいます。 FRPには溶接出来ませんので、しっかりと食いつく様に、鉄板はパンチング(穴を開ける事)加工した物を使用します。 下の写真の銀色の鉄板が、今回埋め込む物です。



その後、FRPで固めていくのですが、まず、ガラス繊維(グラスファイバー)を全体にあてがっていきます。 下の写真の白い繊維は、ガラスの繊維です。 この繊維の上から硬化剤を塗っていき、固まったものがFRPと呼ばれる物です。



硬化後、塗装。 そしてショックブラケットを取り付けします。 マーコスは、車高の関係でショートストロークのショックを使用した場合、取り付け位置を下げないとショックのストロークが出ません。 そこで、ノーマルのブラケットを上下逆にし、取り付けしています。 今回、ショックも一緒に交換しているのですが、選択したのはGAZ製。 マーコスのハンドリングを活かすべく、調整式で固過ぎない物を選びました。



フロントがこの状態なので、リアもチェックします。 すると、やはりリアもショックの取り付け部分がダメに。 とりあえず、FRPを剥がしチェック。



リアも、フロントと同様に鉄板を入れ補強します。 こちらもFRPとしっかりと食いつく様にパンチングメタルを使用します。 銀色の鉄板が、今回補強で入れる物。



この後は、フロントと同様にガラス繊維を使い、硬化剤で固めていきます。 下の写真は、硬化剤を塗り固まった状態です。



硬化剤が固まった後、塗装まで完了しました。 後は、ショックを取り付けるだけの状態。



そして、フロント同様にGAZ製ショックが取り付けられました。 これだけしっかりと補強を入れておけば安心でしょう。



今回は、サーキット走行前に点検し発見出来たので大事に至らずホッとしました。 一歩間違い、サーキット走行中にブラケットが外れたら、最悪、ステアリングも効かず大変な事故に繋がってしまったかも知れません。 恐らく、レストア時にしっかりと修正・補強せずにFRPを被せてしまっているのでしょう。 FRPは、しっかりとした補強をいれば強度も出るのですが、ショックの取り付け部などは、鉄板による補強が大事となります。 これで安心してサーキット走行をして頂けるでしょう。