850チューニングレポート

1959年、発売当初のミニは850ccエンジンでした。 パワーこそ少ないですが、良好なギア比との組み合わせにより良く走るエンジンです。 今回、ひょんな事から850チューニング計画が持ち上がり、その作業についてレポートしていきたいと思います。

今回の計画の主であるOさんは、このエンジンが積まれている1964年ミニモークにてツーリングやクラシックカーイベント、はたまたサーキット走行まで幅広く楽しんでいました。 イベントでは愛知や岐阜、そして富士など、自走で高速を走り出かけていたのですが、2008年秋にイベントで静岡へ向かう途中の高速にてエンジンより異音が発生、エンジンを分解・オーバーホールすることになったのです。 そこで、「せっかくオーバーホールするんだからチューニングしよう」という話しになったのでした。

まず、異音の原因を探っていきました。 ギアBOX回りはOK、デフ回りもOK。 ヘッド関係も問題なし。 シリンダーOK、ピストンもOK。 そして突き止めたのがカム回りからでした。 通常、エンジン内部の回転部分にはスムーズに回転が行われるようベアリングが使われています。 ベアリングと言っても数多くの種類があり、ボールが並んでいる物やローラーが並んでいるタイプの物は良く見かけますね。 今回、問題となっていたカムの部分には通常カムメタル(下の画像参照)というベアリングが入っており、カムがスムーズに回転するようになっているのですが、実は850ccエンジンにはこれがありません。 直接ブロックとカムが当たり、回転する仕組みとなっています。 そのあたり面が荒れていたこと、カムを固定する役目ももっているオイルポンプにガタが出てきていたことが合わさり音がでてしまったようです。


「どうせオーバーホールするなら、一緒にチューニングしたい」というOさんの要望に答えるため、色々な方法を検討しました。 まず、チューニングの素材としては850ccエンジンというのは決してお勧めできるものではありません。 カムメタルが無い為、高回転では負荷が大きすぎる。 いかんせん排気量の小ささもネックとなってきます。 ボーリングを行ってしまうのが一番簡単なチューニングではありますが、シリンダーはまだまだキレイなので、出来れば850ccのままいきたい。 う〜ん、どうしようか・・。


それと、今回のチューニング計画が出た要因のもう一つ、それが下の写真。 超レアな850cc用のスペシャルチューニングのクランクシャフトです。 「これを組んで使いたい」という思いはあるのですが、せっかくスペシャルクランクを入れるのですからトータルでチューニングをしたいとなるわけです。 また、写真のヘッドはこれまたレアなDOWNTONチューニングヘッド。 これも一緒に組みたいとなったのです。


まず、今回のチューニングにおいて最大の問題点となるであろうカムメタルについて考えました。 クランク、ヘッド等入れる前提として、さらに排気量はオリジナルのままでいくとなると、走ったときにどうしても回転を上げる方向になると思います。 そこでカムが高回転で回っても耐えられるよう、カムメタルを加工し組み込む事に。 カムメタルは通常圧入されていますので、内燃機屋さんへ加工に出します。 そして帰ってきたのが下の写真。 3箇所にカムメタルが加工組み込みしてあります。


下左の写真は、タイミングチェーン側からカムの取り付け部からのカット。 直線上にきっちり並んで加工を行わなければいけません。 下右の写真はオイルポンプ取り付け側からのカットになります。


また、カムメタルの加工は使用するカムに合わせて行う為、カムも先に選択しなければなりません。 今回、あえて選択したのが純正のキャブクーパー用のカムです。 なぜ?と、思う方も多いと思いますが、最近アフターパーツのカムの造りが以前と比べ悪くなっていたり、磨耗が激しかったりというのが多かったりして、耐久性・信頼性の上から純正を選択。 その中でもキャブークーパー用は約40度と若干のハイカムにも鳴っている為、キャブクーパー用で行くことにしました。 カムは新品ではなく、程度の良い中古品を使用。 それに合わせてカムメタルを加工しています。 カムと一緒に写っているのはハイキャパシティのオイルポンプです。


基本、オーバーホール時にはオイルポンプは交換しますが、今回は交換せざるを得ない理由があります。 それがポンプの駆動部の形状。 下の2枚の写真をご覧下さい。 左がキャブクーパーなどの高年式のミニの形状のオイルポンプ、右が今回モークから外したポンプです。 赤い矢印の部分はカムと連結されるのですが、連結部の形状が違う為、カムに合わせたポンプを使用しなければなりません。 また、チューニングという意味でも油膜切れを防ぐ為に大容量のオイルを送りたい為、ハイキャパシティを選択使用します。

今回はここまで。 現在進行形で作業は進んでいます。 今はミッションが組み立て完了するところですね。 随時、内容は更新していきますので、おたのみに!

PART−2